前立腺肥大症とは
前立腺は膀胱の下に位置し、精液の成分である前立腺液を分泌し、サイズや形は栗の実に似ています。前立腺は男性の生殖機能の1部を担っている器官であり、尿道を取り囲むように存在し、前立腺肥大症になると尿道が圧迫されて排尿障害を起こします。頻尿であったり、尿が出にくくなったりと、幅広い症状を起こします。
主な症状
- 頻尿(排尿の回数が極端に増える)
- 夜中にトイレに起きる
- 突然強い尿意に襲われる
- 尿意があっても、尿がなかなか出てこない
- 排尿に時間がかかる、いきまないと尿が出ない
- 排尿の勢いが弱い
- 排尿が途中で途切れる
- 残尿感
- 尿が出ない
など
前立腺肥大症は進行する病気で、はじめは軽い症状ですが、進行するにしたがって症状が強くなる傾向があります。症状が重くなるとトイレが気になって外出しにくくなり、趣味やスポーツも楽しめなくなってしまいます。また、残尿によって結石や尿路感染症、腎臓病などの発症リスクも上昇します。悪化によって尿閉という尿が出なくなる状態になるととても危険です。症状が軽いうちに泌尿器科を受診して、しっかり治しましょう。
前立腺肥大症の原因
前立腺が大きくなることが原因となって前立腺肥大症が発症しますが、前立腺は加齢によって大きくなる傾向があって、50歳を超えるとその傾向が特に顕著になることもわかっています。男性ホルモンの分泌バランスは加齢によって変化するため、生殖機能の一翼を担う前立腺もその影響を受けて発症するのではと考えられています。また、肥満、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病などの関与が指摘されていますが、はっきりとした原因はよくわかっていません。
前立腺肥大症の診断
症状の起こりはじめた時期、これまでの推移、症状の内容、持病や服薬しているお薬などについて問診で伺います。その後、必要に応じて下記の検査を行います。
前立腺特異抗原(PSA)検査
前立腺がんの腫瘍マーカー検査で、前立腺肥大症と前立腺がんの鑑別に有効です。特殊なたんぱく質の血中濃度を調べます。
尿流量測定検査(ウロフロメトリー検査)
排尿の勢いや量、排尿時間を計測する検査です。当院には普段通りに排尿することでこうした測定ができる検査用のトイレがあります。
残尿測定検査
超音波(エコー)検査で調べる簡易的な検査と、細い管状のカテーテルを尿道口から挿入して導尿を行う正確な検査があります。
超音波(エコー)検査
前立腺の大きさを調べる検査です。
前立腺触診(直腸診)
肛門から指を挿入し、前立腺を触診して大きさなどを確かめます。医療用のゼリーを塗るため、痛みや不快感はほとんどありません。
前立腺肥大症の治療
検査結果と可能な治療についてわかりやすくご説明して、相談しながら治療方針を決めます。薬物療法と手術療法に大きく分けられ、早期で症状が軽度の場合は薬物療法を行うことが一般的です。
薬物療法
症状を解消に導く薬剤と、前立腺を少しずつ小さくする薬剤に大きく分けられます。また、炎症を抑えて症状軽減を促進するために漢方薬が使われることもあります。
α1受容体遮断薬・PDE5阻害薬
排尿に関係した筋肉の緊張を緩和する薬剤です。尿路の圧迫を解消して尿を出しやすくします。比較的短期間で症状が改善しやすい傾向がありますが、前立腺の肥大自体は改善しません。
5α=還元酵素阻害薬・抗アンドロゲン薬
男性ホルモンの働きを抑制して前立腺を少しずつ小さくする効果が見込めます。前立腺自体が小さくなって尿路の圧迫が解消し、尿を出しやすくなりますが、効果が現れるまで時間がかかるケースが多くなっています。
漢方薬・植物エキス製剤・アミノ酸製剤
前立腺の炎症を抑制して症状緩和につなげます。
手術療法
症状が重い場合や、腎臓障害などの合併症を起こしている場合に選択されます。侵襲が少ないため回復も早い内視鏡手術と、開腹手術に分けられます。当院では手術が必要な患者様は提携病院にご紹介させていただきます。
内視鏡手術
尿道口から挿入したスコープで前立腺の状態を確認しながら手術します。肥大した前立腺を内視鏡スコープ先端の電気メスやレーザーによって切除、あるいはくり抜いて小さくします。お身体への負担も少なく、回復が早いため、現在は内視鏡手術が主流になっています。
前立腺肥大症の症状軽減と予防のために
排尿障害は、様々な原因で起こるため、リスクになる生活習慣に気を付けることで前立腺肥大症の症状軽減や発症予防効果が期待できます。
下記のことに気を付けるようにしましょう。
- 尿意を我慢せず、すぐトイレに行く
- 便秘解消と予防
- 身体を冷やさない
- 毎日入浴して、芯まで温まる
- デスクワークや立ち仕事の場合、こまめに歩く
- 水分摂取量の不足や過剰を起こさないよう心がける
- 軽い運動を習慣的に行う
- 過度の飲酒を避ける
- 唐辛子など刺激が強い香辛料を控える
市販薬に注意を
風邪薬や胃腸薬などの一般的な市販薬にも、抗コリン薬が含まれていることがあります。この成分は尿の出を抑制してしまうため、服用すると前立腺肥大症の症状悪化を起こす可能性があります。
前立腺肥大と診断された方は、服薬しても大丈夫な市販薬についてあらかじめ聞いておくと安心です。