過活動膀胱に対するボツリヌス療法
過活動膀胱の治療は、まず、薬物療法や運動療法がおこなわれます。3ヶ月以上治療を続けても症状の改善が見れなかったり、諸事情によりお薬の服用が困難な場合は、難治性過活動膀胱とされます。そのような患者様に対して有効な治療法はボツリヌス毒素膀胱壁注入療法です。ボツリヌス毒素膀胱壁注入療法は過活動膀胱に対する新しい治療法です。ボツリヌス毒素を膀胱内壁に注射すると、膀胱内の筋肉の収縮作用を弱め、過活動膀胱の症状が改善されます。2020年4月より保険適応となり、当院でも導入しております。外来で受けられる治療なので、過活動膀胱でお困りの方は是非ご相談ください。
過活動膀胱とは
過活動膀胱は、よくある排尿トラブルの1つです。
- 尿意切迫感(急に強い尿意をもよおし、我慢できない)
- 頻尿・夜間頻尿(トイレが近い)
- 切迫性尿失禁(急に強い尿意を感じ、トイレまで我慢できずに漏れてしまう)
などの症状が起こります。国内では40歳以上の8人に1人が過活動膀胱と言われています。トイレを気にするばかり、生活の質を下げてしまうこともありますが、治療により症状を軽減させることもできます。過活動膀胱については詳細ページをご覧ください。
ボツリヌス毒素膀胱壁注入療法の効果について
ボツリヌス療法で使用するA型ボツリヌストキシンには筋肉の収縮を弱める効果があります。ボツリヌスは顔や瞼の痙攣や腋窩多汗症、その他美容治療においても広く使用されています。膀胱内に直接注入することで、膀胱の筋肉の異常な収縮を和らげ、諸症状を改善させます。世界90ヶ国以上で治療薬として認可されており、その有効性と安全性が立証されています。また、欧米では2000年代からボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が過活動膀胱の治療の主流となっており、日本では2020年4月より保険適応となっています。
治療法について
膀胱に局所麻酔を行った後に、膀胱鏡を挿入し、細い針を使用して20~30ヶ所に注射を行います。治療時間は10~20分程度で、外来で受けることができます。
治療効果について
治療効果は、施術後2~3日程度現れます。個人差がありますが、効果は4~8ヶ月持続します。3ヶ月経過していれば、再投与が可能です。
国内の臨床結果では、初回投与後6週の時点で1日あたりの尿失禁回数が3.64回減少、27%の方で尿失禁が完全に消失、60%の方で尿失禁の回数が半分以上消失になったと報告されています。
治療の副作用について
臨床結果では、治療後に下記の副作用が報告されています。
血尿(約2%)
膀胱内に注射をすることで血尿が出ることがありますが、一時的なものでほとんどは通常で治まります。
尿路感染症(約5%)
尿の出口から細菌が入り込み、膀胱炎、前立腺炎、腎盂腎炎などの尿路感染が生じることがあります。
排尿困難、残尿の増加、尿閉(約5〜9%)
尿が出しきれなかったり、尿がたまってしまうことがあります。残尿量によっては、カテーテルを使用して自己導尿を行っていただくこともあります。
アレルギー(1%以下)
お薬の影響により、吐き気、じんましん、発疹などのアレルギー症状が起こることがあります。
治療後に副作用が出た場合は、速やかにご連絡ください。
治療が受けられない方
以下のいずれかに該当する方はボツリヌス毒素膀胱壁注入療法が行えません。
- 現在尿路感染症を患っている方
- 重度の排尿障害があるが、自己導尿などの対処をしていない方
- 重症筋無力症などの全身性筋力低下を起こす病気のある方
- 喘息などの慢性的な呼吸器疾患のある方
- 妊娠中・授乳中の方
- 施術後の副作用で自己導尿が必要になった場合に同意できない方
治療費用
3割負担 | |
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ボツリヌス毒素膀胱壁注入療法 | 約60,000円 |