尿失禁・頻尿とは
尿失禁や頻尿は加齢によって起こる頻度の高い症状です。ケア用品のCMがテレビで流れるようになって、誰にでも起こる可能性があることという認識は一般的になってきましたが、適切な治療によって改善できることはまだあまり知られていません。また、尿失禁や頻尿は重大な病気の症状として現れることもあります。その場合には早急な治療が必要になります。
デリケートな話題なので、気後れしてなかなか受診しにくいという方も多いと思いますが、そうした問題だからこそ悪化させるとQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく下げてしまいます。隠れた病気の有無を確かめるためにも、お気軽にご相談ください。
尿失禁とは
意思と無関係に尿が漏れてしまう状態です。膀胱はたまった尿が一定量を超えるとそれを脳に伝え、尿意が起こります。尿意を感じたらトイレに行って排尿します。こうした機能のどこかに問題が起きて発症します。
パッドなどを使っても不快感があり、不衛生になりやすく、匂いが気になってしまうことから外出が億劫になって、日常的な楽しみがなくなってしまうことも少なくありません。原因や状態に合わせた適切な治療を受けて、解消させましょう。
頻尿とは
排尿回数が過度に多い状態です。日中の排尿回数には個人差がありますが、一般的な目安は1日に8回程度です。ただし、8回以下でも排尿回数が増えたと感じるようでしたらご相談ください。まや、夜間、トイレに起きる場合はそれが1回でも夜間頻尿です。
頻尿があると不安感があって外出時にはいつもトイレのことが気になり、それを苦にして外出を控えてしまうケースが少なくありません。日常のさまざまな場面で起こるストレスや、大事なイベントへの不安を解消するために、排尿回数が気になったらすぐにご相談ください。
尿失禁の原因とタイプ
尿失禁は下記の5タイプに分けられます。
腹圧性尿失禁
腹圧が不意にかかった時に尿が漏れるタイプです。くしゃみ、咳、ジャンプ、大笑いなどで起こり、女性の発症が多くなっています。尿道を普段はしっかり締め付けている筋肉の弛緩が主な原因と考えられていて、この筋肉は妊娠や出産でダメージを受けやすく、そのダメージの影響で女性の発症が多いと考えられています。また、女性は男性に比べて尿道が短いので発症しやすい傾向があるとされています。
切迫性尿失禁
突然強い尿意が起こって、トイレが間に合わずに漏れてしまうタイプです。こちらも尿道の短い女性の発症が多くなっています。過活動膀胱によって起こっていることが多くなっています。
混合型尿失禁
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方が当てはまるタイプです。 溢流(いつりゅう)性尿失禁
尿道が圧迫されて尿が出にくくなって排尿後に残尿が残ってしまう、あるいは尿意があるのに尿が出ない尿閉を起こして、たまった尿が行き場を失って少しずつ漏れてしまっている状態です。男性に多く、原因も前立腺肥大による尿道の圧迫である場合がほとんどを占めます。
機能性尿失禁
排尿機能には問題がありませんが、足が不自由でトイレまでの移動に時間がかかり過ぎて間に合わない、あるいは認知機能が衰えてトイレがどこにあるかわからなくなって漏れてしまうタイプです。泌尿器科の治療は必要なく、介護プランの見直しなどが必要です。
頻尿の原因とタイプ
頻尿を起こす主な原因には、下記の4種類があります。
過活動膀胱
膀胱に少量の尿がたまっただけで尿意を起こすようになって、十分にたまるまで我慢ができなくなっています。膀胱の収縮活動がコントロールを失って起こるため、突然激しい尿意に襲われる尿意切迫感、トイレまで間に合わずに漏らしてしまう切迫性尿失禁などを起こします。
発症の主な原因には、膀胱炎、加齢、ストレスなどがあります。女性に多い疾患ですが、男性も前立腺肥大症で過活動膀胱を起こすことがあります。また、脳や脊髄の病気の症状として過活動膀胱が現れていることもありますので、症状に気付いたら泌尿器科を受診してください。
残尿
排尿後も膀胱に尿が残ってしまうため、頻繁に尿意を感じるようになります。男性の場合は前立腺肥大症による尿道の圧迫によって起こることが多く、女性は膀胱炎による機能障害で発症しやすいとされています。
多飲多尿
水分を過剰に摂取することが多飲で、尿量が増加することが多尿です。すぐに膀胱がいっぱいになってしまうため、頻尿を起こします。糖尿病の症状として現れることが多いため注意が必要です。また、水分調節機能の障害による尿崩(にょうほう)症、ストレスによる心因性多飲症などの病気が関わっている可能性があるため、尿量の増加に気付いたら受診してください。なお、多尿の判断基準の目安は1日の排尿量が3リットル以上とされています。
心因性頻尿
排尿機能には問題がなく、ストレスなどで尿意を敏感に感じてしまって頻尿になっている状態です。
尿失禁・頻尿の治療
症状緩和改善のために膀胱や尿道の機能を改善する薬剤には様々なものがありますので、症状や原因などに合わせて適切なものを処方します。また、病気が原因で尿失禁や頻尿が起こっている場合には、その治療も重要です。加齢などによる筋肉の衰えなどが主な原因で起こっている場合には、骨盤の筋肉を鍛えるトレーニングも有効です。また、膀胱に適切な尿量をためておく膀胱訓練で改善するケースもあります。また、電気や磁気による刺激療法、手術が有効なこともあります。幅広い治療が可能ですから、お悩みがありましたらご相談ください。
薬物療法
膀胱の異常な収縮を抑制する抗コリン薬や、尿道を締め付ける機能をサポートするβ受容体刺激薬などが主に使われます。前立腺肥大がある場合には逆効果になる可能性があるため、治療は必ず泌尿器科で受けるようにしてください。
運動療法
いつでもトイレに行ける状態で膀胱にためる尿量を増やす膀胱訓練が有効な場合があります。また骨盤底筋の弛緩や衰えによって頻尿や尿失禁を起こしている場合には、骨盤底筋を鍛えるトレーニングで効果が得られるケースも少なくありません。いつでも簡単にできる体操ですので、日常に取り入れてください。
その他
骨盤底筋に電気や磁気の刺激を与える物理療法が頻尿や切迫性尿失禁の改善効果につながることもあります。また、症状が重い腹圧性尿失禁に有効とされている尿道を人工のテープで吊り上げる手術を検討することもあります。