子どもの包茎
子どもが幼いうちはお風呂で全身をきれいに洗ってあげる必要があります。ペニスはおしっこをする部分ですので、特にしっかり洗ってあげたい部分です。それもあって、子どものペニスの状態になんとなく不安を感じている方は少なくありません。子どものペニスは包茎で、大多数はそのうち自然にむけるようになります。ただし、子どもの包茎に問題がまったくないというわけではありません。たとえば、おしっこが中にたまってしまうなど排尿に問題を生じさせるケースや、炎症を繰り返す場合は受診が必要です。
包茎とは
亀頭が包皮に完全に覆われていて、包皮を下げようとしても亀頭が露出しない状態が包茎です。包皮を下げようとした際に、亀頭が少しだけ見えるケースもあれば、まったく見えないケースもあります。子どものペニスでは包皮が亀頭に癒着していて、包皮を下げられないこともあります。
治療が必要な子どもの包茎
- 排尿障害をともなっている
- 亀頭包皮炎を繰り返す
- 包皮を下げた時に外尿道口が見えない
など
※おしっこの際にペニスの先がふくらんでしまう場合、排尿障害が疑われます。
包茎の治療方法
薬剤の塗布
ステロイドの軟膏を1日2回、1ヶ月程度、塗る治療法です。塗布する部分は、包皮の狭くなっている場所です。少量ですから副作用もほとんど心配ありません。約90%に効果があるとされているため、おすすめできる治療法です。これでむけるようになっても、放置していると再び包茎になって包皮がむけなくなるため、入浴時には必ず包皮をむいて洗う習慣を付けてください。
包皮輪拡張
包茎の原因になっている包皮輪という狭い部分を、器械で広げる治療を行います。その後、入浴時には必ず包皮をむいて洗う習慣を付けることで包茎の再発を防ぎます。
手術薬剤の塗布や
包皮輪拡張で解消できない場合や、再発を繰り返す場合には、手術を検討します。
亀頭包皮炎
包皮に炎症を起こす病気で、ブドウ球菌感染によって起こるケースが多くなっています。包茎の子どもの発症が多い傾向があります。尿道の炎症はありません。
症状
ペニスの先が赤く腫れ、膿が出ることもあります。触れると強い痛みを生じますが、尿道には炎症がないためおしっこの時に強い痛みが出ることはほとんどありません。
診断と治療
赤みや腫れ、膿などを確認して診断します。細菌感染によって起こっているため、抗生剤による治療が有効です。内服、あるいは軟膏を塗布すると数日で症状が改善します。包茎で何度も亀頭包皮炎を繰り返す場合には、包茎の治療をおすすめしています。
尿道下裂
尿の出口が先端になく、亀頭手前のくびれ・ペニスの付け根・陰嚢などにあります。尿道下裂は、ペニスに起こる先天的な形態異常です。包茎で隠れてしまう位置にあるとわかりにくいこともあります。
移動性精巣(遊走睾丸)
陰嚢に触れた時に、精巣の存在がわかる時とわからない時があったら、移動性精巣が疑われます。精巣には筋肉が付いていて、緊張や刺激でこの筋肉が収縮するとそけい部にあるそけい管に精巣が上昇します。そのため、確かめる時には入浴時や就寝時などリラックスした状態で調べる必要があります。リラックスした状態で左右大きさが同じ精巣が陰嚢の底の方まで降りて来ない場合には、停留精巣であり治療が必要です。
停留精巣
胎児の精巣は最初、腹腔内にあります。胎児の成長にともなって精巣が陰嚢に下降しはじめ、産まれた時には正常な位置になっています。なんらかの原因によって、精巣の下降が途中で止まってしまうことがあり、それが停留精巣です。腹腔内やそけい管など、停留している場所は様々です。成長しても自然に降りてくることは少ないため、治療には手術が必要です。放置していると将来不妊症の原因になり、成人になってもそのままにしているとがんになる可能性もあるため、早期の発見と治療が重要です。
症状
陰嚢を触れても精巣の存在がないため、出生時にわかることもあり、定期検診などで指摘されることもよくあります。造精力低下を防ぐためにも、早めにご相談ください。
どこまで降りてきているのかをまず確認します。触診でもわかる場合がありますが、触れてもわからない腹腔内やそけい管にある場合には超音波(エコー)検査を行います。それでも見つからない場合には腹腔鏡による検査が必要です。
自然に降りてくることはほとんどないため、精巣の成長に影響が出ないうちに手術を検討します。
小児の陰嚢(精索)水腫
精巣と精索は、陰嚢内鞘膜に包まれています。この膜の中に体液がたまっている状態が陰嚢(精索)水腫です。陰嚢内鞘膜は腹腔から出ている鞘状突起がつながっていますが、産まれる時にはこの通路が閉鎖しています。陰嚢(精索)水腫はこの通路が閉鎖しないことで体液が流れこんでたまって陰嚢の腫れを起こします。
症状
陰嚢が大きくなるため、出生時や定期検診などで指摘されて気付くことが多くなっています。痛みなどはないとされていますが、造精力低下によって将来の不妊症につながる可能性があります。陰嚢の腫れはそけいヘルニアでも起こりますので、早めに受診して原因を確かめましょう。
診断と治療
超音波(エコー)検査で体液の存在を確認して診断します。ある程度の体液がたまった後で鞘状突起が閉鎖している可能性もありますので、針穿刺でたまった液体を抜いて再発がなければ鞘状突起が閉鎖しているため治療は終了です。何度か繰り返しても体液がたまる場合には、手術を検討します。
夜尿症
子どもは排尿機構が未発達で、ある程度成長するまでは「おねしょ」をするのが普通です。発達の度合いには個人差がありますが、5~6歳を過ぎても「おねしょ」が続く場合は夜尿症とされます。
夜尿症には、『あせらない』『おこらない』『おこさない』
子どもの成長には十分な睡眠が不可欠であり、深い睡眠、熟睡は特に重要です。「おねしょ」をしないよう夜中に起こしてしまうと睡眠が中断されて良質な睡眠がとれなくなります。また、「おねしょ」をしたことを怒るのも止めましょう。意識的に行っていることではないため叱っても効果がありません。就寝がストレスになって熟睡できなくなる可能性もあります。早く治そうと『あせらない』、夜中に『おこさない』、「おねしょ」をしても『おこらない』ことを心がけてください。
夜尿症の原因とタイプ
夜尿症は、原因によって、夜間多尿型、排尿機能未熟型、混合型の3タイプに大きく分けられます。タイプによって有効な治療法が変わってきます。夜尿症のタイプは排尿日誌を記録して、それを参考に判断します。
夜間多尿型 | 夜間尿量が多いことで「おねしょ」をするタイプで、「おねしょ」の尿量が多い場合はこのタイプが疑われます。いくつかの原因によって生じるとされており、その原因には抗利尿ホルモン分泌不足、習慣性多飲、塩分過剰摂取、ストレスなどが指摘されています。 |
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排尿未熟型 | 膀胱におしっこをためる能力や、おしっこを我慢する能力が未発達なことが原因です。昼間のトイレが近い場合はこのタイプが疑われます。 |
混合型 | 夜間多尿型と排尿未熟型の両方があるケースです。 |
排尿日誌について
排尿に関するデータを記録するもので、夜尿症タイプ診断や治療経過の確認に不可欠です。記録する内容は、排尿回数、排尿量、「おねしょ」の回数と量、最大我慢尿量、飲水量などです。
診断と治療
問診と尿検査、そして排尿日誌を確認して夜尿症のタイプや重症度を診断します。重症度は年齢にも大きく左右され、同じ夜尿の回数や量でも年齢が上がれば重症度は高くなります。
夜間多尿型
夜間の尿量を減らすことが最も有効です。夕方からの水分制限を行いますので、起床直後からお昼まではしっかり水分補給をするようにしてください。夕方から夕食までは水分を控え、夕食後には基本的に飲水せずに過ごします。夏場や風呂上がりなどでのどの渇きがある場合には、氷を舐めさせるか、ごく少量の冷水を飲ませます。こうした飲水制限に加えて、内服薬を処方することもあります。
排尿未熟型
膀胱を大きくする必要があります。10歳までは200ml、10歳以上では250ml以上たまるようにするのが目標です。膀胱の収縮力を抑制する内服薬を処方して、十分な尿量をためやすくします。また膀胱訓練といって、昼間にできるだけおしっこを我慢するトレーニングも有効です。
内服薬について
膀胱容量を増やしたい場合は抗コリン剤を処方します。夜尿が強い場合には一時的に抗利尿ホルモンを使うこともあります。三環系抗うつ剤を処方するケースもありますが、2週間投与と1週間休薬など慎重に経過を見極めて最小限の使用にとどめます。
尿失禁・おむつがとれない
子どもは、昼間の「おもらし」、尿意を我慢できない、少しだけ尿漏れするといった排尿障害を起こすことがあります。子どものおむつがとれる時期には個人差があるため、あまり幼いうちから神経質になることはありませんが、排尿障害が長期間続くと尿路感染症を繰り返す可能性があり、腎障害を起こす可能性もあります。また、膀胱や尿道の神経・形態・機能に先天的な問題があって排尿障害を起こしている可能性もあります。二分脊椎や後部尿道弁、神経因性膀胱なども疑われるため、泌尿器科を1度受診して原因を確かめてもらいましょう。
なお、夜の「おねしょ」は排尿障害に関する問題があって起こっていることはまれです。
神経因性膀胱
膀胱には、尿をためておいて漏らさない機能、排尿時に勢いよく排出する機能があります。こうした機能に問題が起こって尿漏れや排尿困難といった排尿障害を起こすのが神経因性膀胱です。腎臓にダメージが及ぶ可能性がありますので、排尿障害がありましたら早めにご相談ください。
膀胱尿管逆流症
尿は腎臓で作られて尿管を通り、膀胱にたまります。膀胱尿管逆流症は、膀胱にたまった尿が逆流して尿管や腎臓に戻ってしまう病気です。腎臓や尿管に感染症を起こして高熱を出すことがあります。また、膀胱の圧力で腎盂炎や水腎症を起こすことがあり、腎機能低下にもつながる可能性があります。感染による高熱以外にも、尿の濁りや異臭、吐き気・嘔吐などの症状を起こすことがありますので、こうした症状に気付いたらすぐに泌尿器科を受診してください。